早大理工物理'11[2]

図に示すように、高さを調節できる発射台から水平面上の台車に向けて大きさの無視できる鉄球を水平右方向に打ち出す。台車は、水平で厚みの無視できる上板およびばね定数kのばねから構成されている。上板の質量をMとし、ばねなど台車のそれ以外の部分の質量は無視できるものとする。上板はなめらかで、鉄球に対する反発係数をeとする。ばねと上板は、台車に対して鉛直方向になめらかに運動するものとする。ばねの伸縮が平衡状態のときの上板の位置を鉛直方向の座標原点とし、発射高さはこの点から測った高さとする。床面はなめらかで、台車は水平方向に自由に運動できる。鉛直上方及び右方を座標の正の向きとし、重力加速度の大きさをgとする。
上板を平衡位置で静止させた後、質量
mの鉄球を発射高さHの位置から初速度で水平方向に打ち出し、静止した台車の上板に落下させた。ただし、とする。

1 鉄球が台車の上板に到達したとき、鉄球の速度の水平成分、鉛直成分はいくらか。
2 鉄球が上板に衝突した直後、上板の速度の水平成分、鉛直成分はいくらか。
3 衝突後、上板は鉛直方向には単振動した。その振幅はいくらか。本問以降の問では、一度衝突した鉄球が再び上板に衝突することはないものとする。

高さHの位置から打ち出した鉄球により上板が単振動しているとき、2つ目の質量mの鉄球を水平方向に打ち出し、その初速度を調節して台車の上板に落下させた。発射高さおよび発車時刻を調節したところ、衝突後上板の振動が止まり、振幅が0になった。

4 2つ目の鉄球の発射高さをとするとき、高さの比はいくらか。

発射高さを再びHとし、上板を平衡位置で静止させる。上板には質量の無視できる電磁石が設置されていて、鉄球を吸着・切り離し、あるいは鉄球に力を加えることができるものとする。今度は上板と同じ質量Mの鉄球を初速度で水平方向に打ち出し、静止した台車に落下させた。鉄球が上板に衝突する瞬間に、電磁石を動作させて鉄球を上板に吸着させた。

5 衝突直後の台車の速度はいくらか。

衝突後ばねが収縮しはじめ、最も収縮した時点で電磁石の動作を止めたところ、鉄球は上昇途中に上板を離れた。

6 ばねが最も収縮したときの上板の鉛直方向の位置を求めよ。
7 鉄球が上板を離れるときの上板の鉛直方向の位置を求めよ。
8 鉄球が上板を離れるときの鉄球の速度の鉛直成分は、衝突する直前に鉄球のもつ速度の鉛直成分の何倍か。

一方、衝突後ばねが最も収縮したときから、電磁石の動作を完全には止めずに、磁力を調節して上板から鉄球に下向きに一定の力をかけ続けたところ、鉄球は上板から離れることなく単振動を続けた。

9 鉄球が上板から離れることなく単振動を続けるのに必要な力の大きさの最小値はいくらか。

解答 問1〜問5あたりは基本問題ですが、問6以降、物理的考察を行うのにも緻密な神経を必要とする難問です。

1 鉄球は水平方向にを受けず、速度成分で等速度運動します。鉄球が上板に到達したとき、鉄球の速度の水平成分は、 ......[] のままです。
このときの鉛直成分として、等加速度運動の公式より、

より、
......[]

2 鉄球と上板との衝突で、鉄球は上板から水平方向にを受けず力積も受けないので、上板の受ける水平方向の力積0,衝突直後の上板の速度の水平成分0 ......[]
衝突直後の、鉄球の速度の鉛直成分,上板の速度の鉛直成分とします。鉛直方向について、衝突前後の運動量保存より、
 ・・・@

反発係数の式より、


@に代入して、

1の結果を用いて、
......[]

3 上板の単振動振動中心は鉛直方向の座標原点(はじめにいた位置)で、ここで衝突しているので、問2で求めた速度の大きさ速さの最大値です。上板の単振動の周期角振動数,公式:より、問2の結果を用いて、上板の単振動の振幅は、
......[]

4 2つ目の鉄球が、上板の単振動の振動中心以外のところで衝突した場合、ここで一時的に速度0になっても、振動中心に向けて動き出してしまいます。従って、振動が止まり振幅0になった、ということは、振動中心で衝突したということで、衝突直前の上板の速度です(衝突直後と大きさは同じで向きは逆)1つ目の鉄球との衝突直前の鉄球の速度の鉛直成分は、問1としてです。2つ目の鉄球の衝突直後の鉄球の速度とすると、衝突直後の上板の速度0なので、衝突前後の鉛直方向の運動量保存より、
 ・・・A
反発係数の式より、


Aに代入すると、

2の結果を代入して、

......[]

5 衝突直後に一体となった鉄球+上板(台車)速度の水平成分として、衝突前後の水平方向の運動量保存より、

......[]

6 衝突直後に一体となった鉄球+上板の速度の鉛直成分として、衝突前後の鉛直方向の運動量保存より、


これより、衝突直後の鉄球+上板の運動エネルギーは、

衝突直後の
力学的エネルギーは、鉄球+上板の運動エネルギー,ばねは自然長の位置からだけ縮んだ状況にあり、ばねの弾性エネルギー,ばねが最も収縮したときの力学的エネルギーは、運動エネルギー0,鉄球+上板の位置X (に注意)として、重力位置エネルギー,ばねの自然長からの縮みは、初期位置のばねの縮みからさらにだけ縮んでいてで、ばねの弾性エネルギー
衝突直後とばねが最も収縮したときの
力学的エネルギー保存より、


 ・・・B
に注意して、

......[]
注.重力弾性力位置エネルギー(距離つり合いの位置から考える)から考えることもできます。つり合いの位置は、より、自然長の位置からだけ下方で、衝突位置つり合いの位置から上方、ばねが最も収縮した位置つり合いの位置からだけ下方です。力学的エネルギー保存則の式は、

ここからもBが得られます。

7 離れるのが自然長の位置であることはよく知られた事実ですが、ここでは、運動方程式を立てて確認してみます。
鉄球と上板の位置xにおける加速度aとします。鉄球が鉛直方向に受けるは、重力垂直抗力Nで、鉄球の鉛直方向の運動方程式は、
 ・・・C
上板が鉛直方向に受ける
は、重力垂直抗力,問6と同様にばねの縮みなので、ばねの弾性力,上板の運動方程式は、
 ・・・D
C,Dより、を消去して、

 ・・・E
鉄球と上板が離れるとき,よって、
......[]

8 鉄球が上板を離れるときの速度の鉛直成分Vとして、離れるときの力学的エネルギーは、鉄球+上板の運動エネルギー,離れる位置自然長の位置なのでばねの弾性エネルギー0,鉄球と上板の重力位置エネルギー
衝突直後と、鉄球と上板が離れるときとの、力学的エネルギー保存より、

より、

......[]

9 鉄球+上板の単振動の振動中心は、ばねが自然長位置から縮んだ位置で、上板の初期位置(自然長位置から縮んだ位置)から下方です。単振動の振幅は、問6の結果を用いて、

鉄球+上板が単振動を続けると、最もばねが伸びたときの位置は、振動中心から振幅だけ上方で、

Eより、
位置における垂直抗力Nと大きさF磁力の和は、


単振動を続けるために、
位置においても鉄球と上板が離れず、である必要があります。


必要な
の大きさFの最小値は、 ......[]


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