東大物理'02年前期[2]

 図2-1に示すように、環状の鉄心に巻き数のコイル1と巻き数のコイル2が巻かれている。これらのコイルの電気抵抗は無視できるほど小さく、コイル1は抵抗と任意の電圧Eを発生できる電源に接続され、一方コイル2は抵抗とスイッチSに接続されている。これらのコイルに電流を流したとき、磁束は鉄心内にのみ発生し、鉄心外への漏れは無視できるものとする。そのとき鉄心内の磁束Φと、コイル1の電流およびコイル2の電流との間には、以下の式()が成り立つものとする。
   式()
ここで、磁束Φと電流およびの向きは図中の矢印の向きを正とし、係数kは鉄心の形状や透磁率によって決まる定数とする。
また、微小時間の間にこの鉄心内の磁束がだけ増加したとき、およびコイル
1の電圧との間には以下の式()が成り立つ。
   式()
ここで、電源の電圧E,コイル1の電圧,コイル2の電圧は、それぞれa点、b点、c点を基準としたときの間、間、間の電位差と定義する。
時刻では、いずれのコイルにも電流は流れていないものとして、以下の問T,Uに答えよ。


T スイッチSが開いている状態のとき、コイルTの電圧が図2-2に示す電圧波形(のとき一定値をとり、その他の時刻では0をとる)となるように、電源の電圧Eを変化させた。
(1) 時刻t のとき、コイル1の電流は正負どちらの向きに増加するか。また、その理由を簡単に述べよ。
(2) 時刻における鉄心内の磁束Φを求めよ。
(3) ()を用いて、時刻におけるコイル1の電流を求めよ。
(4) 以下のそれぞれの場合について電源の電圧Eを求めよ。
(a) 時刻t の場合
(b) 時刻t の場合

U 次にスイッチSが閉じられている場合を考える。問Tと同様に、コイル1の電圧が図2-2に示す電圧波形となるように、電源の電圧Eを変化させた。
(1) 時刻における鉄心内の磁束Φを求めよ。
(2) 時刻t のとき、両コイルの両端に発生する電圧の大きさの比、を求めよ。またc点と点とでは、どちらの電位が高くなるかを答えよ。
(3) 時刻t のとき、コイル1の電流を求めよ。


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解答 式()では、コイルの電圧起電力の違いに注意してください(自己誘導を参照)電流磁束の正負が指定されているので、コイルの巻き方にも注意してください(電磁誘導の法則電流の作る磁界を参照)

T(1) 正の向きに増加する ......[]
[理由] コイルの電圧ということは、電流の負方向に電流を流す向きの起電力がコイル1に発生している、ということです。レンツの法則より、磁界の変化を妨げる向きに起電力が発生するので、電流は正の向きに増加していることになります。
[別解] のとき、コイル1には上向きの磁界が発生し、のとき、コイル2には下向きの磁界が発生し、ともになので、です。式()においてより、ですが、式()において、より、,従って、電流は正の向きに増加します。

(2) ()において、が一定なので、として、
においては電流が流れていないので、式()より、
における
磁束は、
......[] ・・・@

(3) ()において、,@より、
......[] ・・・A

(4)(a) ではAにおいて、として、
注.こうできるのは、において、が一定で、Φt 1次関数,なので、式()より、t 1次関数になるからです。
コイル
1側の回路においてキルヒホッフ第2法則より、 (コイル1電圧bよりも高いときに正で、このとき、電流の正方向にループを回って、コイル1電圧電圧降下です)
......[]

(b) において、より磁束のまま変化しません。
()を用いて、

オームの法則より、 .......[]

U(1) コイルの巻き数、時間間隔に変化がなければ、式()より、電圧に影響するものは磁束の変化だけです。従って、スイッチSを閉じても、電圧がTと同じなら、もTと同じです。
......[] ・・・B

(2) コイル2についても、コイル1と同様に、
・・・C
が成り立ちます。(のとき、磁界の変化を妨げる向きにコイル2にはとなる方向に起電力が発生します。このときです)
()をCで辺々割ると、

.......[] ・・・D
においては、なので、点の方がc点よりも電位が高くなります。
......[]

(3) (2)で触れたように、のとき、です。また、
電流の大きさは、オームの法則により、
より、
・・・E
Tと同様に、Bにおいてとして、において、 ・・・F
E,Fと式
()により、

......[]


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