東工大物理
'09
年前期
[2]
図
1
のように、真空中に、面積
S
の
2
枚の水平な金属円板からなる平行板コンデンサーがある。平行板コンデンサーの下電極はつねに固定されているが、上電極は鉛直方向のみに自由に動くことができる。下電極の位置を基準とし、鉛直上向きを正とする座標
x
を考える。上電極の質量を
m
,重力加速度の大きさを
g
,真空の誘電率を
とする。ただし、電極間の距離はつねに金属円板の半径より十分に小さいものとする。また、電極の厚さ、および電極の振動によって発生する電磁波は無視できるとして以下の問いに答えよ。
[A]
平行板コンデンサーの上下電極に、それぞれ
および
(
)
の電荷を蓄え、はじめに上電極を
の位置に外力によって固定した。
(a)
外力を変化させ、上電極を位置
から
に移動させた。コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーの変化
を求めよ。
(b)
静電エネルギーの変化をもとに、上電極の位置が
のときに、極板間に働く静電気力の大きさ
を求めよ。
(c)
図
2
のように、ばね定数
k
の重さが無視できるばねを上電極に取り付け、ばねの上端を固定した。このとき、上電極は
の位置で外力によって支えられており、ばねは自然長である。上電極を支えていた外力をはずしたところ、上電極は下電極に接することなく単振動をはじめた。上下電極の間隔が最も狭いとき、下電極の電位を基準として上電極の電位
を求めよ。ただし、上下電極にはそれぞれ
および
の電荷が常に蓄えられており、ばねに電荷が逃げることはないものとする。
[B]
図
1
の平行板コンデンサーの上下電極を完全に放電した後、図
3
に示すように厚さ
,誘電率
,面積
S
の誘電体円板を、下電極に完全に重なるように置き、電流計と起電力
の電池を接続した。さらに外力を用いて、図
4
に示すように、上電極の位置が
から
の間で周期
T
をもって周期運動するように動かした。上電極は時刻
から
(
n
は
0
以上の整数
)
の間、一定の速度で動いている。電池と電流計の内部抵抗は無視できるものとする。
(d)
を満たすある時刻
t
において、上電極は
の位置にあった
(
)
。平行板コンデンサーの容量
を求めよ。また、平行板コンデンサーの上電極に蓄えられている電荷量
を求めよ。
(e)
a
は
D
に比べて十分に小さいとして、問
(d)
で求めた
の近似値を求めてみよう。問
(d)
で求めた
は、上電極の位置が
のときのコンデンサーの容量を
とすると、
と書ける。ここで
であるので、
b
は
D
に比べて十分に小さい。そのため、
(
イ
)
は
1
よりも十分に小さい。
1
より十分に小さい
z
(
)
に対して成り立つ近似式
を使うと
は
と近似できる。
(
ア
)
と
(
イ
)
を求めよ。
(f)
問
(e)
で求めた
の近似値を用いて、電流計が示す電流の変化の様子を時刻
0
から
の範囲で答案用紙の解答欄に図示せよ。また、電流計が示す電流の最大値
を答えよ。ただし、電池の正極から電流が流れ出すときの電流値を正とする。また、時刻
付近
(
答案用紙中の斜線の領域
)
における様子は示さなくてよい。
解答
コンデンサー
に関する標準的な問題です。
[A](a)
のとき、コンデンサーの
静電容量
は
,
静電エネルギー
は、
のとき、コンデンサーの
静電容量
は
,
静電エネルギ
ーは、
静電エネルギー
の変化は、
......[
答
]
(b)
極板間には引力が働くので、両極板を引き離すために外力は正の仕事をすることになります。極板間の
電気力線
の密度は
極板間距離
が変化しても変わらないので、極板間の
電界
も変わらず
静電気力
も変化しません。
静電気力
に逆らって
外力
のする
仕事
は
,これが
(a)
の
静電エネルギー
の変化分になるので、
∴
......[
答
]
(c)
極板間には引力が働くので、
(b)
の
静電気力
の向きは、上極板では鉛直下向き
(
x
軸負方向
)
です。上極板には他に、
重力
(
x
軸負方向
)
,上極板の位置を
x
としてばねの
伸び
が
となるのでばねの
弾性力
(
x
軸正方向
)
が働きます。これらの
力のつり合い
より、
振動中心
(
力のつり合いの
位置
)
の
x
座標
は、
はじめ、上極板は
にいたので、
単振動
の
振幅
は
,上下電極の
間隔
が最も狭いときには上極板は
振動端
にあって、その
x
座標
は、
(
とおく
)
このときの
静電容量
は
,下極板を基準とする上極板の
電位
は、公式
と
(b)
の結果を用いて、
......[
答
]
[B](d)
極板間隔
,極板間の誘電率
のコンデンサー
と、
極板間隔
,極板間の誘電率
のコンデンサー
の直列接続の
合成容量
が
になると考えます。
∴
......[
答
]
......[
答
]
(e)
のときの
静電容量
は、
(d)
の
で
として、
(d)
の
は、
より、
(
ア
)
,
(
イ
)
......[
答
]
(f)
上極板は、
においては、問題文のグラフより
時間
の間に
距離
a
進むので、
速さ
は
となります。
j
を自然数として、上極板の
速度
は、
のときに、
のときに、
時刻
付近を除いて
(
のときに
が存在しない
)
、
電流
(
電池の正極から
電流
が流れ出すときにコンデンサーの上極板の
正電荷
が増大するので
となることに注意
)
は、
(d)
の
の近似を用いて、
よって、
のとき、
(
)
のとき、
(
)
よって、
電流
の変化の様子は右図。また、
......[
答
]
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