東工大物理
'07
年前期
[3]
電磁波は電場と磁場が振動しながら伝わる横波である。ある地点での電場の時間変化を図
1
に示す。波の最も高いところを山、最も低いところを谷と呼ぶ。また、電磁波の速さを
とする。ある人工衛星が、波長
の電磁波を発信している。この人工衛星の仰角
θ
を測定する装置を開発する。仰角とは人工衛星を見上げる角度のことで、水平方向が
,真上が
である。まず図
2
に示すような
2
台の受信器
A
,
B
と時間差計測器からなる装置を用意した。受信器
A
の真下に受信器
B
を置き、その間隔
d
を
3.0m
にした。この装置は受信器Aが電場の山を検出してから受信器
B
が電場の山を最初に検出するまでの時間差を計測する。次に装置をテストするため、人工衛星と同じ波長の電磁波を発信する発信器を装置から十分離れた位置に置いた。以下の問いに答えよ。
必要なら「
から角度
θ
を求める表」を用いてもよい。
(a)
この電磁波の周波数
f
[Hz]
を求めよ。
(b)
発信器を仰角
の場所に置いたところ、
2
台の受信器で同時刻に山が検出された。発信器を少しずつ高く上げて
θ
を少しずつ大きくしていくと、
2
つの受信器の検出時刻に差が生じ、その差は徐々に大きくなっていった。この時間差
を
θ
で表せ。
(c)
仰角
θ
をさらに大きくすると、ある角度で再び時間差が
0
になってしまう。この時の角度
を求めよ。
(d)
前問
(c)
で述べたことが起こるため、この装置では
θ
を一つに決めることができない。このことを考えに入れて時間差が
のときの
θ
の正弦
(
)
を小さい方から
3
つ求めよ。
(e)
角度
を大きくするためには
2
台の受信器の間隔を小さくすればよい。
2
台の受信器の間隔
d
を
0.30m
にした場合には、
は何度になるか。
(f)
この時間差計測器の測定精度には限界があり、
0.1ns (
)
未満の時間差は切り捨てられてしまう。たとえば、
0.2ns
以上
0.3ns
未満の時間差は
0.2ns
と測定される。いま、間隔
d
が
3.0m
の装置で時間差が
0.5ns
と検出されたとき、仰角
θ
は何度から何度の範囲になるか。ただし、
θ
は
d
が
3.0m
の装置での
より小さいとする。この同じ電磁波を間隔
d
が
0.30m
の装置で計測すると時間差は何
ns
になるか。これから求められる仰角
θ
の範囲は何度から何度になるか。
(g)
このように受信器の間隔を小さくすると
は大きくなるが、求められる
θ
の精度は悪くなってしまう。
を大きく保ちつつ高精度の計測を行うため、
3
台の受信器
A
,
B
,
C
を用いる。
B
は
A
の真下に
3.0m
離して設置し、
C
は
A
の真下に
0.30m
離して設置した。この装置で実際の人工衛星を観測したところ、受信器
A
が電場の山を検出してから受信器
B
,受信器
C
が最初に電場の山を検出するまでの時間はそれぞれ
0.4ns
,
0.7ns
であった。人工衛星の仰角
θ
は何度から何度の範囲にあるか。
解答
波動の公式を暗記しているだけの受験生には、何を言っているのか意味不明の問題文だと思いますが、波動についてよく理解できている受験生には簡単な問題です。
有効数字
の書き方に注意をしてください。
(a)
波の公式
より、
......[
答
]
(b)
発信器から受信器
A
,
B
までの
経路差
,受信器
A
,
B
が検出した
時刻の差
による
位相差
は
(
波の位相
を参照
)
、
∴
・・・@
c
,
d
に値を代入して、
......[
答
]
(c)
再び
時間差
が
0
、ということは、
仰角
から
仰角
を大きくして行き、
仰角
が
になったときに、ちょうど
位相差
が
となった,つまり、
経路差
が
波長
λ
に等しくなったということです。
より、
,表より、
......[
答
]
(d)
仰角
から
仰角
を大きくして行き、@において、
のときに最初に
時間差
が
になるとして、
このときの
経路差
は、
として、この
経路差
が
増加したときにも同じ
位相差
となり、同じ
時間差
を生ずるので、
時間差
が
となる
経路差
は、
,
より、
∴
・・・A
従って、
時間差
が
となる正弦の値は、小さい方から
3
つ書くと、Aにおいて、
のときで、
......[
答
]
(e)
仰角
が
のときに
経路差
がちょうど
波長
λ
になるので、
∴
∴
......[
答
]
(f)
時間差
が
0.5ns
ということは、
@より、
・・・B
のとき、
より、
・・・C
表より、
仰角
の範囲は、
......[
答
] (
これより大きな角度もあり得ますが、題意より、
(d)
の
n
が
0
の場合を答えます
)
のとき、
となりますが、これをCにかけて、
@より
,よって、観測される
時間差
は、
0[ns] ......[
答
]
時間差
が
0[ns]
と観測されるとき、
より、
表より、
仰角
の範囲は、
......[
答
]
(g) A
と
C
では
で
,@より、
∴
・・・D
このとき、
なので、
経路差
は
波長
以下であり、
経路差
の中に
1
個を越える波が入ることはありません。
A
と
B
では、
で、
より、Aにおいて
として、
・・・E
D,Eがともに満たされるような
n
を探すと、
のときで、このとき、
表より、
仰角
の範囲は、
......[
答
]
東工大物理
TOP
物理
TOP
TOP
ページに戻る
各問題の著作権は出題大学に属します。
©
2005-2022
(有)りるらる
苦学楽学塾
随時入会受付中!
理系大学受験ネット塾
苦学楽学塾
(ご案内は
こちら
)ご入会は、
まず、
こちらまでメール
をお送りください。
雑誌「
大学への数学
」出版元