東工大物理'06年前期[3]

水平面上を運動する、水平な床をもつ台車がある。台車は外力によって自由に加速度を変えることができるものとする。図のように、台車の床の上には前後方向に勾配をもつ傾斜角θ の斜面が固定されている。この斜面の上には、質量mの小物体が置かれている。ここで、斜面と小物体との間の静止摩擦係数をμ,動摩擦係数をとする。この斜面の右側には曲面がなめらかにつながっている。重力加速度をgとして、以下の問に答えよ。ただし、小物体の運動は台車の上から観測するものとする。

[A] 台車は一定の加速度α()で、図の左向き(正の向きとする)に運動をはじめた。
(a) 図のように、小物体を斜面上のP点に置き静かに手をはなしたところ、小物体は斜面を一定の加速度でのぼり始めた。このとき台車の上の観測者から見た、小物体に働くすべての力の向きを図示し、その名称を記入せよ。
(b) P点から斜面に沿って距離sだけのぼった地点をQ点とする。小物体がQ点を通過したとすると、Q点通過時の小物体の速さはいくらか。
(c) もし傾斜角θ が、ある角以上()であるならば、この物体はいかなるαでも斜面をのぼることはできない。このはいくらか。で答えよ。
[B] 斜面はQ点の高さのところで、前後方向の断面が円弧となる曲面になめらかにつながる。この円弧の半径はrで、中心Oは台車の床と同じ面内にある。また、小物体と曲面の間には摩擦力は働かないとする。小物体がQ点を通過した直後に台車は加速をやめ、台車の運動は等速直線運動に変わった。
(d) Q点を速さで通過した直後の小物体が、曲面から受ける垂直抗力の大きさはいくらか。を用いて表せ。
(e) 小物体は曲面から離れることなく、最高点のR点を速さで通過した。のとり得る最大の値はいくらか。
[C] 小物体がR点で速さで通過した直後に、台車は加速度の等加速度運動に移行した。その後、小物体は曲面から離れることなく、曲面上のT点を通過した。
(f) T点における小物体の速さがちょうどに等しかったとすると、は何度か。


解答 頻出タイプの力学の問題ですが、東工大の名にふさわしい難問です。

[A](a) 小物体が斜面をのぼり始めているとき、小物体に働くは、斜面からの垂直抗力重力摩擦力慣性力で、の向きは右図。

(b) 小物体に働くの斜面に垂直な方向のつり合い
 ・・・@
小物体の
加速度aとして、斜面に沿う方向での小物体の運動方程式
@を代入して、

よって、小物体の運動は等加速度運動で、等加速度運動の公式より、
.......[]

(c) 小物体に働く静止摩擦力fとします。
小物体に働くの斜面に沿う方向の力のつり合い

小物体がのぼりださない条件は、静止摩擦力最大静止摩擦力以下であることであって、
この場合にも@は成立するので、
fNに代入すると、
両辺を()で割ると、

 ・・・A
のとき、A式右辺は、より、
ということは、になってしまうと、不等式Aは、左辺は以上で、右辺はより小さく、必ず成立してしまいます。
この問題で求めるのは、
αがいかなる値であっても、小物体が動き出さないときの、最小の傾斜角の正接の値なので、
......[]
注.αの関数と見ると、において単調減少で、のとき、です。

[B](d) Q点を通過した直後から小物体は円運動するようになります。
小物体が曲面から受ける垂直抗力Nとして、円運動の運動方程式(円の法線方向について)
 (不等速円運動を参照)
......[]
(e) 右図のように小物体がORと角φをなす位置まで来たとき、小物体の速さvだとすると、

円運動の運動方程式(円の法線方向について)
 ・・・B
この点を重力による位置エネルギーの基準にとると、R点との高さの差はです。
この点での
力学的エネルギー運動エネルギーのみで、R点での力学的エネルギー運動エネルギー重力による位置エネルギーの和です。
この点と
R点とにおける力学的エネルギー保存
 ・・・C
Cより、
これをBに代入すると、

Q
点からR点まで()小物体が曲面から離れない条件は、

 ・・・D
φが大きくなると、この不等式の右辺は小さくなるので、となる全てのφでDが成立するためには、Dがにおいて成立すればよく、
のとり得る最大の値は、 ......[]
[C](f) 右図のように、とします。

T点を重力による位置エネルギーの基準にとると、R点との高さの差はです。
R点での力学的エネルギー運動エネルギー重力による位置エネルギーの和です。
T点での力学的エネルギー運動エネルギーのみです。
小物体が
R点からT点まで来る間に、大きさ慣性力が水平方向左向きに働きます。
小物体は、台車上で見て、水平方向に移動するので、
慣性力のする仕事は、です。
T点での力学的エネルギーからR点での力学的エネルギーを引いたものが、慣性力のする仕事になります(エネルギーの原理を参照)。よって、
 (三角関数の合成を参照)
においては、
......[]


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