京大物理
'05
年前期
[1]
次の文を読んで、
には適した式を、
には適した数値を、それぞれ記せ。
図
1
のように、水平な地表面上に敷かれたレールを電車が一定の速さ
V
で動いているとする。このレールは、点
Q
の手前で点
O
を中心とした半径
R
の円弧状であり、点
Q
の先では点
Q
で円弧に接する直線状となっている。レールの幅、電車の幅、長さ、高さはいずれも、
R
に比べて非常に小さいとする。以下の
(1)
〜
(3)
では電車は円弧状のレール上を動いているときについて、
(4)
では電車が直線状のレールを動いているときについて、車内での小物体の運動を考える。ここで、重力加速度の大きさを
g
とし、小物体の大きさと小物体に対する空気の抵抗はいずれも無視する。
(1)
電車が点
Q
の手前の円弧状のレール上を走っているとき、図
2
のように、電車の天井の点
S
から、質量の無視できる長さ
d
の糸でつるされた質量
m
の小物体は、車内の観測者から見て静止していた。なお、図
2
はこの電車を進行方向から見たところであり、図の左方向が中心
O
の方向である。また、点
A
は電車が動いていないときの小物体の静止位置である。このとき、車内の観測者には、車内の小物体に大きさ
ア
の遠心力が働いているように見えるので、糸が鉛直線
SA
となす角度
θ
は
イ
を満たす。また、糸の張力
T
と重力
との比は
θ
のみを用いて、
ウ
と表される。
(2)
小物体が車内の観測者から見て動いているときでも、その速さが
V
に比べてじゅうぶんに小さければ、短い間に電車の加速度運動が小物体へ及ぼす影響は、大きさ
ア
の遠心力のみに現れると近似的に考えることができる。以下、この近似を使って考えることにする。この場合、車内の観測者から見て小物体には常に重力と大きさ
ア
の遠心力の合力が働くので、あたかも重力加速度の方向と大きさが変化したように見える。この見かけの重力加速度の大きさを
とすると、
と
g
の比は
θ
のみを用いて表すことができて、
エ
となる。
(3)
小物体を点
A
から、車内の観測者から見て速さ
u
で電車の進行方向に押し出した。この後、小物体は車内の観測者から見て円運動をした。この円運動の半径は
d
と
θ
を用いて表すと
オ
である。また、速さ
u
は
d
,
,
θ
を用いて表すと
カ
であり、円運動の周期は
d
,
,
θ
を用いて表すと
キ
となる。
(4)
この小物体が
(3)
のように円運動をしていて、ちょうど点
A
を通過したときに、電車は図
1
のレール上の点
Q
を通過し、直線状のレールに速さ
V
のまま移った。この直線状のレール上を走っているとき、車内の観測者が見ると、図
3
のように、小物体は点
A
を中心とする振動をした。この振動において、点
A
から測った小物体の最高位置の高さ
h
は
u
と
g
を用いて、
ク
と表される。したがって、この振動において糸が鉛直線となす最大の角度を
θ
として、
エ
と
カ
の結果を使って、
を
のみを用いて表すと、
ケ
となる。ここで、
α
も
θ
も小さいとして
および
と近似すると、
コ
となる。
解答
難問なのですが、誘導に従って考えてゆけばゴールにたどりつけます。
(3)
の
u
と
(4)
の
u
が結びつけばよいのです。
(1)(
ア
)
等速円運動
している電車の
加速度
は
です。電車内の観測者から見て小物体に働く
遠心力
は、
......[
答
]
(
イ
)
右図より、
......[
答
]
(
ウ
)
張力
T
と見かけの
重力
がつりあうから、
......[
答
]
(2)(
エ
)
......[
答
]
(3)(
オ
)
電車内の観測者から見て、小物体は、
A
を通り図
2
の糸の方向
(
つりあいのときの方向
)
と垂直な面内で
等速円運動
する。
円運動の
半径
は、
......[
答
]
(
カ
)
図
2
の糸の方向での
力のつり合い
より、
∴
等速円運動
の
運動方程式
:
∴
......[
答
]
(
キ
)
円運動の
周期
を
とし、円周の
長さ
を考えて、
∴
......[
答
]
(4)(
ク
)
点
A
を
位置エネルギー
の基準として、
A
では
運動エネルギー
のみ、最高点では、
位置エネルギー
のみ。
力学的エネルギー保存
より、
∴
.......[
答
]
(
ケ
) (2)
の結果
,
(3)
の結果
より、
一方、図
3
より、
よって、
∴
......[
答
]
(
コ
)
問題文の近似を行うと、
∴
1 ......[
答
]
(3)
は、「見かけの
重力
」を
重力
のように考えて、糸に角度をつけて小物体に
速度
を与えると考えれば、円錐振り子になっていることがわかると思います。
(4)
は、円錐振り子の円の接線方向の
速度
(
等速円運動の
速さ
)
が
振動中心
での
速さ
になることに気づけばよいでしょう。振動を考える必要もなく、
力学的エネルギー保存則
の式を立てるのみで解決します。
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