長崎大物理
'10
年
[3]
図のように円筒容器が水平に置かれている。この円筒容器の壁は断熱されており、中は断熱性の仕切り板
(
断面積
S
)
と円筒容器の外部との熱の出入りが自由なピストン
(
断面積
S
)
によって
2
つの部分に区切られている。これらの仕切り板とピストンは左右になめらかに動く。左側には単原子分子の理想気体
A
が封入されており、熱が加えられるようにヒーターが取り付けられている。また右側には単原子分子の理想気体
B
が封入されている。初期状態では、気体
A
、気体
B
の圧力は
,温度は
であり、どちらの気体も円筒容器の外部の圧力および温度と等しかった。また、円筒容器の左側から仕切り板までの距離と仕切り板からピストンまでの距離はともに
であった。ただし、仕切り板の厚さは無視できるものとする。
過程
a
初期状態において、ヒーターで気体
A
に熱を加えると、仕切り板とピストンはゆっくり右側に移動した。そして、しばらくして熱を加えるのをやめると、仕切り板とピストンは停止した。このときの気体
A
の温度は
であった。
(
あ
)
気体
A
の内部エネルギーの変化量
を
,
,
,
,
S
を用いて表せ。
(
い
)
ピストンが停止したときの気体
A
の体積
を
,
,
,
S
を用いて表せ。
(
う
)
気体
A
に加えられた熱量
Q
を
,
,
,
,
S
を用いて表せ。
過程
b
初期状態において、ピストンを動かないように固定してヒーターで気体
A
に熱を加えると仕切り板は停止した。このときの気体
A
の温度は
であった。
(
え
)
仕切り板が停止したときの気体
A
の圧力
を
を用いて表し、また、仕切り板が移動した距離
を
を用いて表せ。
(
お
)
気体
B
が周囲から加えられた仕事を
W
として、気体
A
と気体
B
が吸収または放出した熱量
と
をそれぞれ
,
S
,
,
W
のうち必要なものを用いて表せ。ただし、吸収の場合を正、放出の場合を負とする。
(
か
)
過程
b
における気体
B
の圧力と体積の関係についてグラフを描き、さらに気体
B
が周囲から加えられた仕事
W
に相当する面積を斜線によって示せ。
解答
本問のような気体の基本問題では、
状態方程式
と
熱力学第一法則
を素直に適用することを考えましょう。また、ピストンや仕切り板に対して働く
力のつり合い
を見落とさないようにしてください。
初期状態では、気体
A
,気体
B
は、同一状態で同一
体積
のため、
ボイル・シャルルの法則
によりモル数は等しく
n
だったとします。ピストンに働く
力のつり合い
より、気体
B
の圧力は外部の
圧力
に等しく、外部の
圧力
は
です。また、気体定数を
R
とします。
過程
a
初期状態の気体
A
、気体
B
の
体積
は
で、
状態方程式
は、
・・・@
加熱中、また、加熱後にピストン、仕切り板が停止したときにも、ピストン、仕切り板に働く
力
のつり合いが成立するので、気体
A
,気体
B
の
圧力
はともに
のまま一定で、過程
a
において、気体
A
、気体
B
は
定圧変化
をします。
こうした問題では、仕切り板、ピストンを動かし始める
力
、停止させる
力
は無視できるほど小さく、また、仕切り板、ピストンは、無視できるほど小さな
速さ
で等速度運動
(
従って、
力
のつり合いがつねに成立している
)
と考えます。こうした過程は、つねに熱平衡が保たれていて準静的過程と言います。
加熱後、ピストン、仕切り板が停止したときの気体
A
の
体積
を
として、
状態方程式
は、
・・・A
(
あ
)
気体
A
の
温度変化
は
なので、気体
A
の
内部エネルギー
の
変化量
は、
@より、
,よって、
......[
答
]
(
い
)
A÷@より、ピストンが停止したときの気体
A
の
体積
は、
∴
......[
答
]
(
う
)
気体
A
は
定圧変化
をしたので、
定圧モル比熱の式
より、気体
A
に加えられた
熱量
Q
は、
......[
答
]
過程
b
加熱後、ピストン、仕切り板が停止したとき、仕切り板が右に
移動したとして、気体
A
の
体積
は
,気体
B
の
体積
は
です。仕切り板に働く
力
のつり合いより、気体
A
の
圧力
を
とすると、気体
B
の
圧力
も
です。
このときの気体
A
、気体
B
の
状態方程式
は、それぞれ、
・・・B
・・・C
(
え
)
B+Cより、
を消去して、
・・・D
D÷@より、
......[
答
]
B÷Cより、
∴
......[
答
]
(
お
)
ピストンが固定されているので、気体
B
はピストン
B
に対して
仕事
をしません。ということは、気体
B
がされた
仕事
W
(
つまり、気体
B
がした
仕事
は
です
)
は、すべて仕切り板の移動により、気体
A
から受けた
仕事
です。過程
b
において、気体
B
は
等温変化
をしていて
内部エネルギーの変化
はゼロです。よって、熱力学第一法則より、気体
B
が吸収した
熱量
は、
......[
答
]
気体
A
がした仕事は
W
で、気体
A
の
内部エネルギーの変化
は、@を用いて、
熱力学第一法則より、気体
A
が吸収した
熱量
は、
......[
答
]
(
か
)
過程
b
の途中での気体
B
の
圧力
を
P
,
体積
を
V
とすると、気体
B
は
等温変化
をするので、
状態方程式
は、
従って、過程
b
における
圧力
P
と
体積
V
の関係をグラフに描くと右図実線のような直角双曲線の一部となり、初期状態においては、
,
であり、過程
b
の最後では、
,
であって、周囲から加えられた
仕事
W
に相当する面積は右図斜線部となります
(
気体がした仕事
を参照
)
。
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