鹿児島大物理
'09
年
[2]
図
(a)
のように、抵抗
(
電熱線
)
とピストンがついた十分長いシリンダを考える。シリンダ内を水で満たし、抵抗に電流を流して加熱する。以下の問いに答えよ。なお、ピストンの質量は無視でき、その動きはなめらかで、シリンダ内から外に熱は逃げないものとする。また、シリンダ内は、攪拌
(
かくはん
)
され温度は均一とする。
(1)
最初
であった水に、
1
秒あたり一定の熱を加え、全てを蒸発させる。ピストンにおもりを、
(i)
乗せる場合、
(ii)
乗せない場合のそれぞれについて、シリンダ内の温度はどのように変化するか。最も適当なグラフを右の
(
ア
)
〜
(
カ
)
の中から一つずつ選べ。なお、各グラフの目盛りは共通で等間隔である。
(2)
電気抵抗
と温度
の関係が図
(b)
のグラフで与えられるものとする。抵抗で
1
秒間に発生する熱が一定であるように調節するには、温度
T
に対し抵抗に加える電圧
をどのように変化させるとよいか。
T
と
V
の関係を式で表し、さらにグラフを描け。ただし、
で
,
とする。
(3)
外気圧は
1
気圧で、最初、シリンダ内に水が
入っていたとする。水が蒸発を始めてから終わるまでに、水
(
水蒸気
)
がピストンにする仕事を求めよ。ただし、水
の質量は
とし、重力加速度の大きさは
とする。なお、解答には途中の計算も簡単に記せ。
(4)
次の文章はシリンダ内の気体の圧力について書かれたものである。空欄に入れる適当な数式や用語は何か。空欄@〜Dには最も適当なものを下の選択肢
(
ア
)
〜
(
チ
)
より一つずつ選べ。ただし、同じものを二度選んでもよい。空欄Eには適当な式を記せ。なお、
z
軸は鉛直上向きにとり、ピストンはシリンダの底面より高さ
h
にあり、気体の体積は
V
とする。また、物理量
ω
の平均値は
のように文字の上に横棒をつけて書き表すものとする。
シリンダ内の気体が質量
m
の分子
N
個からなると考えよう。速度
で運動していた分子がピストンに衝突すると、分子の運動量は
@
だけ変化する。このとき、分子がピストンに与える力積は
A
の法則より
B
である。一方、ピストンに衝突した分子が再びピストンに衝突するまでの時間は
C
である。従って、気体分子全体がピストンを上向きに押す力の大きさは
D
となり、気体の圧力
p
は、分子
1
個の運動エネルギーの平均値
を用いて
E
となる。
選択肢
(
ア
)
エネルギー保存
(
イ
)
作用反作用
(
ウ
)
熱量保存
(
エ
)
ボイル・シャルル
(
オ
)
(
カ
)
(
キ
)
(
ク
)
(
ケ
)
(
コ
)
(
サ
)
(
シ
)
(
ス
)
(
セ
)
(
ソ
)
(
タ
)
(
チ
)
解答
(1)
は水の
蒸発熱
が
温度
上昇させるのに必要な
熱
よりもかなり大きいこと、
(3)
では気体定数の値を知っていないと、解答できません。
(3)
では、液体から気体になるときに
体積
が大幅に増大することが前提になっています。
(1)
水の
比熱
はほぼ
で
圧力
依存性が小さいことが知られています。従って、
(i)
,
(ii)
で
→
におけるグラフの傾きはほぼ等しくなります。また、
の水を
→
温度
上昇させるのに必要な
熱量
は、
です。
水が沸騰して蒸発する間、全ての水が蒸発してしまうまで、
温度
は
沸点
のまま変化せず、グラフは横軸に平行になります。また、水の
沸点
は
圧力
が大きくなると上昇することが知られており、
(i)
の方が
圧力
が大きく
沸点
が高くなります。水の
蒸発熱
(
気化熱
)
は
において、ほぼ
なので、
の水をすべて蒸発させるのに必要な
熱量
は、
です。
(i)
では、おもりを押し上げる
仕事
の分だけ余計に
熱量
が必要で、
よりも大きな
熱量
が必要になります。
1
秒当たり一定の
熱
を加えるので、
時間
は
熱量
に比例し、
(ii)
で、水が全て蒸発するのに要する
時間
は、
→
に要する
時間
の
倍です。
(i)
の蒸発では、これよりも長い
時間
を要します。
以上より、シリンダ内の
温度
変化を表すグラフは、
(i)
エ
(ii)
ア
......[
答
]
(2)
図
(b)
のグラフより、
抵抗
R
は、
と表せます。
1
秒
当たり一定の
熱
を加えることから、
抵抗
の
消費電力
は一定で、
のとき、
,
より、
∴
∴
......[
答
]
グラフは右図実線。
(3)
の水の
質量
は
で、
で
なので
に相当します。
の
理想気体
は標準状態でも
の
体積
を占有します。水蒸気が生じた後、
外気圧
を
,水蒸気の
圧力
を
p
,シリンダーの
断面積
を
S
,おもりの
質量
を
m
,
重力加速度
の大きさを
g
として、ピストンに働く
力のつり合い
より、
従って、水蒸気の
圧力
は、
で一定です。
水の蒸発が終わるときの水蒸気の
体積
を
V
,水のモル数を
n
,
沸点
を
T
として、水蒸気の
状態方程式
は、
圧力
一定より、水蒸気のした
仕事
は、
......[
答
]
(4)
@
速度
で運動していた分子がピストンに衝突してはねかえると、
速度
は
となり、分子の
運動量
の変化は、
(
コ
) ......[
答
]
A
作用反作用
(
イ
) ......[
答
]
B
作用反作用の法則
により、分子がピストンに与える
力積
は、
(
ス
) ......[
答
]
C
ピストンに衝突した分子は、
z
方向に
速さ
で
距離
運動するので、その
時間
は
(
カ
) ......[
答
]
D
分子は、
1
秒間
に
回ピストンに衝突し、分子が
単位時間
にピストンに与える
力積
、即ち、ピストンに及ぼす
力
の大きさは、
N
個の気体分子全体がピストンを上向きに押す
力
の大きさは、
を平均値
として、
(
キ
) ......[
答
]
E
さらに、
,
より、
なので、気体がピストンに及ぼす
力
の大きさ
F
は、
気体の
圧力
P
は
F
をシリンダー
断面積
S
で割って、
分子
1
個の
運動エネルギー
の平均値
は、
また、
と合わせて、
......[
答
]
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