東北大物理'08年後期[2]

電流の担い手が自由電子である抵抗率ρの直方体の導体を考える。導体の3辺の長さはwhであり、各辺に沿ってそれぞれxyz軸をとる。導体内の単位体積あたりの自由電子数はn,電子1個の電荷は ()である。透磁率は場所によらずすべてμとする。このとき、以下の問いに答えよ。結果だけでなく、考え方や計算の過程も記せ。

(1) 1に示すように、導体の面に平板電極を取り付け直流電源とスイッチを接続し、面の中心点OPに電極を取り付けてそれぞれに端子を介して電圧計を接続する。端子は接地され、の電位をとする。電源の内部抵抗は無視でき、起電力をとする。導体の中心からx軸負方向へrだけ離れた位置には、y軸に平行に直線の導線Wが置かれている。ただし、導体の幅wと高さhrに比べて十分に小さく、導線Wに流した電流が作る磁場(磁界)は導体内で一様と見なせる。また、導体に流す電流がつくる磁場は無視する。導線Wおよび導体内を流れる電流をとし、その値はy軸の正の向きに流れるときを正とする。
以下の枠内の文章に関する(a)(d)の問いに答えよ。
導線Wに流れる電流0の状態でスイッチを入れると、導体内の自由電子は電場(電界)の影響を受け、y軸の( ア )方向に(i)平均の速さvで移動し、導体内に電流が流れる。このとき、端子間に電位差は生じない。
次に、を正にすると、導体には( イ )軸の( ウ )方向に、(ii)磁束密度の大きさBの磁場が加わる。すると、この磁場からローレンツ力を受けた自由電子が面( エ )に蓄積することにより、この面は負に、対向する面は正に帯電する。この帯電によって導体内に電場が発生する。その向きは( オ )軸の( カ )方向である。この電場が自由電子に及ぼす力は最終的にローレンツ力とつり合い、導体内の自由電子の移動は電流0のときと同じようになる。結果として、(iii)端子に電位が生じる
(a) 文章中の( ア )( カ )に適する語句または記号を、( ア )( ウ )( カ )については正、負から、( イ )( オ )についてはxyzから、そして( エ )についてはから選び、答えよ。
(b) 下線部(i)について、vqnwhから必要なものを用いて表せ。
(c) 下線部(ii)について、Bμrを用いて表せ。
(d) 下線部(iii)について、μrnqhwの中から必要なものを用いて表せ。

(2) 1の回路において、端子から導体へ接続する電極の取り付け位置だけが、図2のように面の中心点Pからy軸の正方向にずれた場合を考える。この回路を使って、スイッチを入れた状態で、導線Wに流す電流を変化させて端子の電位を測定した。
(a) 導体の抵抗率ρを、whを用いて表せ。
(b) のときに観測されるを、whρの中から必要なものを用いて表せ。
また、となるときのwlhrμρnqの中から必要なものを用いて表せ。
(c) (2)(b)のときのの関係を、縦軸および横軸との交点がわかるように解答用紙のグラフに実線で描け。
(d) 電源を逆向きに接続し、を負の値にしたときのとの関係を、問(2)(c)の結果との関係がわかるように解答用紙の同じグラフに破線で描け。


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解答 様々なところでセンサーとして実用化されているホール効果に関する問題です。ホール効果の起電力はしっかり理解していないと勘違いし易いので注意してください。問2は目新しいテーマで、おそらく微細部品の位置検出などに用いられている技術をネタにしたのだろうと思います。

(1) として導体に電流を流すとき、自由電子負電荷を持っているので、その運動方向は電流の向きと逆向きになります。本問では、y軸正方向に電流が流れるので、自由電子の運動方向はy軸負方向です。
とすると、右ねじの法則により、胴体部分にz軸負方向の磁場ができます(電流の作る磁界を参照)。この磁場により自由電子ローレンツ力を受けます。ローレンツ力の向きは、フレミング左手の法則で、左手中指を電流の方向(y軸正方向)、人差し指を磁場の方向(z軸負方向)として、左手親指の向く方向(の向き)なので、x軸負方向です。この向きのを受けた自由電子は、面に蓄積します。従って、面(端子)が面(端子)よりも低い電位(電気力線からの向き)となり、導体内にx軸負方向の電場が発生します。
(a)() 負 () z () 負 ()  () x () ......[]
(b) のとき自由電子は導体内で速さvで等速度運動していると考えます。公式: (電流・オームの法則を参照)において、IeqSを導体の断面積(電流の流れる方向に垂直に切ったときの断面)として、より、
......[]
(c) 直線電流距離r離れた位置に大きさ磁場を作ります(直線電流の作る磁界を参照)磁束密度の大きさBは、
......[] (なお、フレミング左手の法則を参照)
(d) 自由電子1個が受けるローレンツ力(x軸負方向)の大きさは、
導体内には大きさ電場が発生します(公式:を使う。電位・電圧を参照)。この電場より自由電子1個が受ける(自由電子負電荷を持ち、電場x軸負方向を向くので、の向きはx軸正方向)の大きさは、です。
ローレンツ力電場から受けるのつり合いより、
......[] ・・・@

(2)(a) 間の抵抗は、長さ断面積より、抵抗率ρを用いて、と表せます(電流・オームの法則を参照)オームの法則より、
......[]
(b) 導体のy方向の長さの部分の抵抗です。
のときには、長さの部分に生じる電圧は、導体をからに向かって流れる電流による電圧降下のみになります。OPを含む断面の方が電位が高いので、端子電位は負になります(端子を接地していることに注意)。このとき、オームの法則より、
......[] ・・・A
(a)の結果を代入すると、
となっています。
の場合も含めて考えると、Aにホール効果による
起電力@が加わります。
 ・・・B (重ね合わせの原理により単に足せばよい)
とすると、
......[]
(c) 問題文が少し悪いですが、(b)では、の関係をグラフに描くときの縦軸、横軸との交点を求めた、と思ってください。
Bより、の関係をグラフに描くと直線になります(右図実線)(b)より、縦軸とは負の部分で交わり、横軸とは正の部分で交わります。
(d) 電源を逆向きに接続し、を負の値にすると、自由電子に働くローレンツ力の向きはx軸正方向となり、面自由電子が蓄積されて、面(端子)電位が面(端子)電位よりも低くなり、@が負になります。また、導体を流れる電流の向きも逆になるので、Aは正になります。結局、Bは、
となり、(c)の直線の傾きの正負が入れ替わるとともに、縦軸との交点が正の部分に移る(絶対値は変わらない)ことになります。この場合のの関係のグラフは右図破線。


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