名大物理
'08
年
[1]
1
.図
1
のように宇宙空間を進む探査機が、点
P
で探査機から
n
モルのアルゴンガス
(
単原子分子気体、
1
モルの質量
)
を、探査機の進む方向に瞬間的に噴射した。探査機は点
P
で速さが
から
に減速され、その後、星
1
のまわりを等速円運動した。ここで、アルゴンガス噴射前の探査機の質量
m
は星
1
の質量
に比べ充分に小さいものとする。以下の問いに答えよ。
(1)
探査機が星
1
のまわりを半径
h
で等速円運動するための速さ
を求めよ。
(2)
噴射されたアルゴンガスの平均速度の大きさは、星
1
から見て
であった。探査機の速さを
から
に減速するために噴射されるアルゴンガスのモル数
n
を
,
m
,
,
,
を用いて表せ。ただし、噴射による探査機の質量変化も考慮せよ。
(3)
絶対温度
T
のアルゴンガスにおける気体分子の熱運動の
2
乗平均速度
を、
,
R
,
T
を用いて表せ。
2
.図
2
のように、質量
の星
2
と質量
の星
3
が、点
A
を中心に、同じ角速度
ω
で等速円運動している。ここで、星
2
と星
3
の距離を
L
,点
A
から星
2
までの距離を
とし、
とする。また、星
2
と星
3
以外の天体の影響は無視できるものとして以下の問いに答えよ。
(1)
星
2
と星
3
について、それぞれ遠心力と万有引力のつり合いの式を
G
,
,
,
L
,
,
ω
を用いて表せ。
(2)
距離
を
,
,
L
を用いて表し、角速度
ω
を
G
,
,
,
L
を用いて表せ。
次に、質量
m
の探査機を操作し、図
3
のように、点
A
と星
3
を結ぶ線分上に置き、点
A
を中心とする半径
x
で、星
2
と星
3
と同じ角速度
ω
で等速円運動させた。ただし、探査機の質量
m
は星
2
,星
3
の質量に比べ充分に小さいものとし、探査機の操作に伴う質量
m
の変化は無視できるものとする。
(3)
探査機に働く遠心力
を
m
,
ω
,
x
を用いて表し、探査機に働く万有引力の合力
を
G
,
m
,
,
,
L
,
,
x
を用いて表せ。力の符号は点
A
から星
3
の向きを正とする。
(4)
とするとき、点
A
と星
3
を結ぶ線分上では探査機に働く遠心力と万有引力の合力
がゼロとなる位置が
の範囲には
1
つある。その位置を求めるため、合力
F
を
G
,
m
,
,
L
,
x
を用いて表せ。さらに、
となる
x
が存在する範囲を次の
(
ア
)
〜
(
ウ
)
の中から選び、その記号を記せ。
(
ア
)
(
イ
)
(
ウ
)
解答
1
.と
2
.は独立な問題になっています。
2
.
(4)
は、物理的な考察の余地もなく、まともに計算しては時間がかかります。勘で答えておく方が良いかも知れません。
1
.
(1)
アルゴンガス噴出後の探査機の
質量
を
として、探査機が
質量
の星
1
から受ける
万有引力
は、
,速さ
で
等速円運動
をしている探査機の
加速度
は
探査機の
運動方程式
:
∴
......[
答
]
(2)
探査機のアルゴンガス噴出前の
運動量
は
,噴出後は
質量
が
m
から
となり速さが
となるので
です。
噴出されたアルゴンガスの
運動量
は
です。アルゴンガスの
運動量
が探査機の
運動量
と同じ向きであることに注意してください。
噴出前後の
運動量保存
より、
∴
......[
答
]
(3)
アボガドロ数
(1
モルの物質の分子数
)
を
として、アルゴンガス
1
分子あたりの
質量
は、
1
モルの
質量
が
なので、
,
速さ
で運動するアルゴンガス
1
分子の運動エネルギーは、
です。アルゴンガスは単原子分子
理想気体
であって、これは、ボルツマン定数を
k
として
に等しく
(
気体分子運動論
を参照
)
、
より、
......[
答
]
2
.
(1)
星
2
と星
3
の間に働く
万有引力
は
星
2
が受ける
遠心力
は
(
等速円運動
を参照
)
,星
3
の円運動の
半径
は
なので、星
3
が受ける
遠心力
は
星
2
について、
力のつり合い
:
・・・@
星
3
について、
力のつり合い
:
・・・A
(2)
@,Aより、
∴
......[
答
]
@に代入すると、
∴
......[
答
]
(3)
探査機に働く
遠心力
は正方向で、
......[
答
]
探査機と星
2
の
距離
は
なので、探査機が星
2
から受ける
万有引力
は負方向で、
探査機と星
3
の
距離
は
なので、探査機が星
3
から受ける
万有引力
は正方向で、
よって、
万有引力
の
合力
は、
......[
答
]
(4)
を
(2)
の結果に代入すると、
......[
答
]
として、
で割ると、
右辺を
とおいて、
のとき、
と
x
の大小関係を調べてみます。
よって、
となる
x
が存在する範囲は、
であって、
(
ウ
) ......[
答
]
追記.問題文に、
F
がゼロとなる位置が
の範囲には
1
つある、と書いてあるので、これで良いわけですが、
のグラフが
にからみつくように変化する複雑な関数だと、上記の事実だけからは何とも言えないことになります。ここでは、一応
の変化を確かめておくことにします。
(
微分法の公式
、
合成関数の微分法
を参照
)
において、
,
なので、
です。よって、この範囲で
は単調減少です
(
関数の増減
を参照
)
。
x
の方は単調増加なので、
のとき
,
のとき
であれば、
において、方程式
は、
の範囲にただ
1
つの解をもつと断定できます。
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