早稲田大学基幹・創造・先進理工学部2009年数学入試問題


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[1] 実数xに対して、x以下の最大の整数をで表す。以下の問いに答えよ。
(1) のとき、を求めよ。
(2) すべての実数xについて、を示せ。
(3) nを正の整数とする。実数xについて、を求めよ。
[解答へ]


[2] に対し、行列A
で定める。xy平面上の直線とする。の各点を行列Aで表される1次変換で移してできる直線をとし、の各点をAの逆行列で表される1次変換で移してできる直線をとする。また、の交点をPの交点をQの交点をRとし、△PQRの面積をとする。以下の問いに答えよ。
(1) 直線と直線の方程式を求めよ。
(2) 3PQRの座標を求めよ。
(3) を求めよ。
(4) を最小にするaを求めよ。
[解答へ]


[3] トランプのハートとスペードの1から10までのカードが1枚ずつ総計20枚ある。に対して、番号i のハートとスペードのカードの組を第i 対と呼ぶことにする。20枚のカードの中から4枚のカードを無作為に取り出す。取り出された4枚のカードの中に第i 対が含まれているという事象をで表すとき、以下の問いに答えよ。
(1) 事象が起こる確率を求めよ。
(2) 確率を求めよ。
(3) 確率を求めよ。
(4) 取り出された4枚のカードの中に第1対,第2対,第3対,第4対,第5対,第6対の中の少なくとも1つが含まれる確率を求めよ。
[解答へ]


[4] 以下の問いに答えよ。
(1) 半径rの円に内接し、1つの対角線の長さがlであるような四角形の面積の最大値をrlで表せ。
(2) 半径rの円に内接する四角形の面積の最大値を求めよ。
(3) 空間内の点Oを頂点とし、四角形ABCDを底面とする四角錐(すい)を満たしているとする。そのような四角錐の体積の最大値を求めよ。
[解答へ]


[5] 実数に対して、
とおく。以下の問いに答えよ。
(1) が最小となるxの値を求め、のグラフを描け。
(2)
とおく。が最小となるtの値を求めよ。
(3) のとき、
が成立することを用いて、右側からの極限を求めよ。
[解答へ]




各問検討

[1](解答はこちら) ガウス記号が出てくると恐怖感を抱く受験生が多いので、2009年の早大理工は、いきなり第1問にガウス記号をもってきて驚かそう、ということのようですが、見かけ倒しで実は大して難しくありません。ガウス記号内が、ある整数から整数+1になるように場合分けしてしまえば手を動かすだけです。この問題で調子をつけて[2][5]を一気に、という感じでしょうか。
雑誌「大学への数学」の解答では、「場合分けする必要はない」と書かれていて、より優れた解法が紹介されています。ここで紹介するわけにはいかないので、ぜひ、「大学への数学」
4月号を熟読して優れた考え方を身につけて頂きたいと思います。また、本問を、場合分けせずに解答した受験生には拍手を送りたいと思いますし、こちらをご覧の皆さんには、本ウェブサイトに掲載されている解答よりも優れた解法で問題を解くことにプライドを感じて頂きたいと思います。
ですが、場合分けしないで解答しよう、という方針には、私には非常に抵抗感があります。試験会場で、ガウス記号内が、ある整数から幅
1の範囲内に収まるように場合分けしてしまえば、誰にでも、極めて明瞭に一本道で解答できます。しかし、場合分けせずに解答できないか、と、考え始めると、より優れた答案を書けるかも知れませんが、優れた解法を考えている間に、回り道の解法でも答案が書けてしまうかも知れません。であれば、試験会場では、多少遠回りでも直接的な考え方の方が良い、というのが、私のポリシーです。
本問で言うのなら、場合分けしても、ほとんど時間のロスはありません。だとすれば、先の見えている考え方で、速攻、手を動かしてしまった方が良いのではないか、と、私は思います。
場合分けしない解法では、私は、場合分けせずにすまないか、と、発想するのではなく、「ガウス記号を整数とおく」、というように理解をする方が良いように思います。

(m:整数)
この考え方は、'08年東工大前期[2]のように、極限を求める問題で、はさみうちの形を作るのに有効です。
早大理工の本問では、いきなり、

実数xに対して、x以下の最大の整数をで表す。nを正の整数とし、を求めよ。
という問題文にすると、平易な問題なのに、一見しただけで受験生が敬遠してしまわないか、と、心配して、出題者が(1)(2)をつけているわけで、などで実験してみて欲しい、という出題者の意図通り考えるなら、整数knで割れば、商をm,余りをrとして、
と書けるので、実数xとすれば、

とするのは自然な流れです。もちろん、自然な流れの通りに考えて行くと行き詰まる、という問題もありますが、そういう問題では、行き詰まってから発想の転換をすれば良いので、本問では、遠回りでも直接的な解法で良いのではないか、と、思います。

有名な先生の中には、種々の優れた解法を数多く暗記して記憶力に頼って解くべきだ、ということをおっしゃる方もいますが、私は、受験数学の解法を数多く暗記するくらいなら、英単語や英会話の言い回しをできる限り覚える方が良いと思います。受験数学の解法を数多く暗記しても、将来、社会に出たときにあまり役には立ちません。今、日本社会で活躍している企業経営者や国会議員や研究者では、米国に留学した、ハーバードで
MBAを取得した、という人が多いことに目を向けて頂きたいと思います。解法の暗記は最低限のものにとどめ、むしろ、将来、国際的に活躍できる素地になるものを身につけることを、お奨めしたいと思います。


[2](解答はこちら) 1次変換がからんでいますが、実質は微分の計算問題です。1次変換と言っても、行列の積と逆行列の基本をついでに確認しておこう、という程度のものです。こうした問題では正解して当然、と、言うべきですが、実際には、どこかで、何らかの勘違い、計算ミスをやらかして、最終解答にたどりつけない、ということが往々にしてあります。受験生は、塾や予備校で有名な先生の板書をひたすらノートに写すのも良いですが、もっと、自分の手を動かして微積分の計算練習をするべきだ、と、私は思います。
よく、少年野球で、「プロ野球○○軍○○選手来たる」とか、「イチロー選手が指導に来た」というようなニュースを見かけますが、イチロー選手や落合さんに打撃法を教わっても、あの天才的な打撃法は普通の子どもでは真似ができないと私は思うんですね。よほど、プロ野球の
2軍で汗にまみれて練習しながら芽が出ずに消えていった名もない人の方が、少年野球の指導には向いているのではないでしょうか?ですが、どうしても名前を追うんですよね。
難関私大早稲田大学と言っても、実は、商の微分法を使って微分計算し、
2次方程式を解いて極値を調べ、増減表を書いて最大・最小を求める、という、こうした問題で正解できるかどうかで合格・不合格が決まっていると私は思います。塾や予備校で、微積分の計算について代表的な技巧を一通り練習できるような私的なプリントを配布する先生がいたら、受験生思いの良い先生だと私は思います。


[3](解答はこちら) 確率の問題に難問をよく出題する早大理工ですが、本問は比較的取り組みやすい問題です。ですが、なかなか、面白いところを突いた良い問題だと思います。来年以降、他大学でも本問をネタにした高難度の問題を出題するのではないか、という気がします。
ふつうの確率の問題では、根元事象
Aの場合の数を全事象Uの場合の数で割って、Aが起こる確率をと求めます。この問題では、などとなる根元事象ABC,・・・があり、確率がと等しくなる根元事象の数、と等しくなる積事象の数、と等しくなる積事象の数、などを数えて解答するようになっています。ここに、抽象化を行う操作が入るのですが、この抽象化自体を考えさせるような複雑な問題を工夫できそうです。
基本は、公式:

なので、ベン図を書いて納得しておいてください。トランプ・カードでは、1枚のカードの属性がマークと番号だけで、本問では、という設定ですが、1つのものに3つ以上の属性を与えるような問題、例えば、n個の球に色を塗り番号をつけ「○△×」のようなマークをつける、というようなことをすれば、3つ以上の根元事象について、となるような問題もあり得ます。


[4](解答はこちら) 空間図形と微分の融合問題で、解答者が自ら立式し微分して増減表を作成し最大・最小を求める、というタイプの問題です。試験会場では、結論は見えているのだけれども、説明の言葉がなかなか浮かばないという受験生が多かっただろうと思います。
こういう問題では、最初から上手に論述しようと思ってしまうと、時間を想定以上に使ってしまいがちです。最初は、答案用紙に少しスペースの余裕をもたせながら、式の羅列だけして最終解答を導いておいて、全問解答し終わってから、傍注をつけるなり、「理由は下記に示す」とかして、あいているスペースに説明書きを補足していく、という方針が良いと思います。答案用紙上で、解答があっちへ飛んだりこっちへ飛んだりするのは採点者の印象が悪くなりますが、採点者にわかるように書いてあれば大きな減点を食らうことはないでしょう。
へこみのない四角形の面積
Sについては、2本の対角線の長さを,対角線のなす角をとすると、とできます。(1)では、この技巧を利用することもできます。


[5](解答はこちら) 平凡な微積計算・はさみうちの極限の問題なのですが、ボリュームはたっぷりあるので途中でメゲてしまった受験生が多いようです。(3)で挫折してしまった受験生は、極限の公式:が思いつけなかったのでしょう。この公式は、の導出に出てくるにおいて、とおき、とすれば得られる公式です。記憶していなかったとしても、試験場で即座に導出できて欲しい公式です。数学Vの比重が高い早大理工、慶大理工あたりでは、を使う問題をよく見かけるので、来年、受験しようという方は、この辺は要注意です。
(3)では、はさみうちの形を作ることが目標になります。受験生の負担を軽くするために、問題文では、
がヒントとして与えられてしまっていますが、ノー・ヒントだったとしても、マクローリン展開などから、xが小さいときには、
 (右辺の末項のでは右辺がよりも大きくなってくれない)
となることを着想できると思います(証明はの増減を調べる)
xには、などの制限が付きますが、各辺から1を引いてxで割れば、
が得られます。



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