共通テスト23年数学について

共通テスト23年数学について

センター試験の頃からずうっと思っていることですが、「共通テスト」、何とかして頂けないでしょうか?
最近、日本の科学技術力の遅れを心配する声を聞きますが、センター試験、共通テストの拙劣なレベルがその原因の一つになっていると、私は考えています。

大学入試センターのホーム・ページを見ると、大学入学共通テストの果たす役割として、

1. 大学教育の基礎力となる知識・技能や思考力、判断力、表現力等を問う問題作成
2. 各大学が実施する試験との適切な組み合わせによる大学入試の個性化・多様化
などが掲げられています。

これが、そもそも間違いだと私は思います。まず、受験生が、志望校の入試を受ける前に必要となる全受験生共通の試験としては、「基礎力」を見ることのみが必要で、思考力、判断力、表現力を問う必要はないと思います。思考力、判断力、表現力は、各大学がその教育方針に応じてその大学の試験問題で問えばよいのであって、事前に共通テストではじいてしまうのでは、各大学が試験をするのに邪魔になってしまうと私は思います。東京大学が要求する思考力は、共通テストの作問者が考える思考力とは全く違います。共通テストの結果、思考力がないと判断されるような受験生でも、東京大学が要求する思考力を有する受験生はいます。判断力、表現力も同様です。

また、各大学が個性化・多様化しているからといって、共通テストが個性化・多様化に対応する必要は全くないと思います。各大学が有している学生の個性・多様性に合わせて、各大学が入学させるかどうかを判断すればよいのです。数学の問題を日本語では理解できなくても、その受験生の母国語
(アジア・アフリカの少数民族の言葉かも知れません)ではきちんと理解できる場合もあります。ノーベル賞を受賞できるような基礎研究に力を入れている大学と、企業や研究所に就職して即戦力として活躍できるような技術を身に着けさせることを目的としている大学では、要求される理解力も異なります。

また、センター試験の頃から、共通テストになってもですが、あまりに個性的内容の問題にこだわりすぎていると感じます。バスケットボールでゴールさせるための条件の計算など、バスケットボールの選手にはまるで無意味です。普通に、
2次関数のグラフを考えさせるので充分です。過去問の類似問題は不可と考えているのかも知れませんが、仮に過去問と同一でも試験のレベルとして全く問題ありません。むしろ、基礎学力を見るのであれば、数多い基礎的問題(これを公表するべきだと私は考えますが)の中から乱数を使って選択して出題する方がよほどよいと私は考えます。

試験問題を個性化するのであれば、各大学が、その大学が擁する教授陣の研究テーマの中から作問すればよいのです。東京大学などの入試問題を毎年見ていて、そうした実践的実用的入試問題をよく見かけます。バスケットボールのゴールの条件よりも、入試問題としてよほど適切です。つまり、共通テストで問題の個性化を図る必要性などないのです。各大学の問題として個性化すればよいと私は考えます。

全受験生に、高校レベルの基礎学力を見る試験として私がイメージするのは、運転免許試験です。自動車を運転するにあたって必要となる道路交通法の基礎知識を見る内容になっていて、ある程度以上の点数を取るか取らないかだけが問われます。共通テストも、各大学の
2次試験を受けるのに当たって必要な学力を備えているかいないかを見るだけで充分です。満点続出のテストでよい、というよりも、満点続出の試験とするべきです。そういう観点から言って、専門教育を行う各大学としては、受験生の思考力・判断力にまで踏み込もうとする現在の共通テストは邪魔になるだけだと私は考えます。

大学入試センターのホームページには、問題評価・分析委員会報告書なるものも掲載されています。そこを見ると、高等学校教科担当教員の意見・評価として、「適切である」「思考力・判断力・表現力に焦点をあてた問題として評価できる」「難易度は適切である」というような絶賛の言葉のオンパレードで、これでは、共通テストが今後改善される見込みはゼロです。私が軽く見ただけでも問題点だらけなのに、そうした指摘は全くありません。そもそも、高校の先生に技術者の最前線に立った経験を有する人はほとんどいないので、高校の先生に正しい評価を期待する方が無理かもしれません。私は、各大学の研究施設・各研究機関・各企業の最前線で技術開発・基礎技術研究に当たる人の評価を仰ぐべきだと思います。作問者は、社会一般との交流を禁じられると思いますが、問題の評価を事後行うのであれば、部外秘にする必要もありません。

個別に問題を見ていきたいと思います。
まず、数学
IAは、第1問は標準的内容で良いと思います。
2問は、統計に関する問題ですが、そもそもこの内容を高校で必修化すること自体に私は反対です。内容的にも、やきとり、かば焼きの支出金額の相関、これは「数学」の問題なのでしょうか?理系受験生の場合、大学に進学にしてこの内容を必要とする機会はあるんでしょうか?文科省に就職する人が必要なら、文科省で勉強してほしい、と私は思います。
そして後半が前述のバスケットボールのゴールの条件の問題です。
2次関数を使って検討する問題です。
という式になるんだそうですが、まず、バスケットボールの選手はこんなややこしい計算をしてゴールを決めるんでしょうか?計算終了前に試合終了のホイッスルが鳴ってしまいそうです。バスケットボールの選手でなければまるで無関係の問題です。
問題の設定がバスケットボールなので、出てくる数がややこしくなります。計算がややこしいので、のときの
yの値が与えてあったりしますが、これが逆にわかりにくく、混乱した受験生がいただろうと思います。もう少し簡単な数値で計算するような問題にするべきです。もっと言えば、教科書に掲載されている例題で充分です。シュートの軌道の高さを比較する最後の選択肢問題も基礎学力を見る上では全く無意味です。

3問の確率は、「構想」というヒントがついていなければ難問で共通テストの内容として不適切です。このヒントをつけてしまうと、思考力を見る意味はなくなります。

4問は整数・不定方程式の問題ですが、あてずっぽうで正解するのを防ぐためなのか、問題文に出てくる数値に11がかけられていて、やたら大きな数値になるように作問されています。そのために、計算ミスで混乱してしまった受験生が、実力のある受験生の中にもいると思います。基礎学力を見るのであれば、もっと簡単な数値で作問するべきです。最後のニヌネノは難しすぎます。どうしても難しくするのであれば、もっと配点を高くするべきです。ここで無駄に時間を使った受験生で泣いている人がいるように思います。

5問は、私は問題文を読み違えました。手順1と手順2で、円と直線の位置関係が異なり、手順1では円と直線が2点で交わり、手順2では円と直線が共有点を持ちません。ところが、手順2を円と直線が交わるとして、手順1と同様の状況で答えても正解できてしまうのです。つまり、手順1と手順2を分ける意味がありません。分けるのであれば、分けて考えないと正解できないように作問するべきです。

次に数学
IIBですが、第1問は、良い内容だと思います。今後この方針で作問して頂きたいと思います。

2問ですが前半は内容的にはよいと思います。オカキクは、選択肢でなく計算結果を書かせるべきです。あてずっぽう正解を防ぐために、オとカは両方正解できて得点、キとクは両方できて得点、とすればよいと思います。

後半ですが、まず
[2](1)は、後段に対するヒントになっていることをはっきり明記すべきです。(2)も気持ちはわかりますが、ソメイヨシノの開花予想をする、というような内容にする必要はありません。教科書に載っている例題の計算で充分です。最後のヒのところは共通テストとして難しすぎます。難問にするなら配点を高くするべきです。

3問も、統計を高校数学の必修内容にすること自体に私は反対です。本問は、教科書を熟知していれば何でもない問題ですが、統計を軽く見ていた受験生が専門的内容で試験会場で戸惑う姿を想像してしまいます。統計を軽く見ていても、ノーベル賞級の研究者として大成するであろう人材はいます。この問題のためにそれを絶たれる人がいるかと思うと私はいてもたってもいられません。

4問の数列の問題も、複利計算をテーマとして取り上げる意味があるのでしょうか。銀行の預金金利は、大手銀行だと0.002%、高くてもせいぜい0.3%で、1%には遠く及びません。アベノミクスの低金利円安誘導で、日銀の国債保有高も政府の財政赤字も巨額に及び、これ以上の円安を防ぐために植田日銀総裁が金利を上げようにも上げようがありません。こうしたときに、金利の計算をテーマに取り上げるのは不適切です。2項間漸化式であれば、過去に何度か大学入試問題としても採り上げられていますが、「ハノイの塔」でn枚の板をすべて移動させる回数回を答えさせる、というようなテーマで充分だと私は思います。(3)の設問は、数学として何の意味があるのかわかりません。

5問のベクトルの問題は、大学ごとの2次試験の問題であれば良い問題だと思いますが、全受験生に対してベクトルの基礎学力を見る問題としては不適切です。素直な、1次独立、内積計算の問題とするべきです。空間ベクトルでは、内積計算が複雑になるので、これを簡単にするような作問が必要です。恐らく、過去問に類似問題がない、ということにこだわっているのでこうした問題になるのだと思いますが、教科書の例題、過去問として頻出の問題で充分であり適切だと私は考えます。

高校教員の評価が、「生徒が主体的・対話的な学びを通して数学的に考える資質・能力を育成するための授業改善に向けた示唆を与えるものであり、高く評価できる」なんてことなら、評価をやる意味すらなく、税金の無駄遣いだと私は思います。私が思うような批判的意見は出ないのでしょうか?であれば、このブログのこの記事には意味があることになります。

ことしは不採用でしたが、数学・国語の記述式問題の導入にも私は絶対に反対です。採点人員の確保、公平な採点、という問題もありますが、各大学の自主的な選択基準への侵害になり、日本の科学技術進歩の障碍になります。

これからも、いかなる団体とも利害関係のない公正な立場から、共通テストに対して毎年意見していきたいと思います。

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