東工大物理'12年前期[3]

[A] 図1上図のように原点Oにスピーカーを置き、一定の振幅で、一定の振動数f の音波をx 軸の正の向きに連続的に発生させる。空気の圧力変化に反応する小さなマイクロホンを複数用いて、x軸上()の各点で圧力pの時間変化を測定する。
ある時刻において、x軸上()の点P付近の空気の圧力pxの関数として調べたところ、図1下図のグラフのようになった。ここで距離OPは音波の波長よりも十分長く、また音波が存在しないときの大気の圧力をとする。圧力pは最大値をとるから、次に最大値をとるまでのxの区間を8等分し、,・・・,と順にx座標を定める。
(a) からまでの各位置の中で、x軸の正の向きに空気が最も大きく変位している位置、およびx軸の正の向きに空気が最も速く動いている位置はそれぞれどれか。

次に点Pで空気の圧力pの時間変化を調べたところ、図2のグラフのようになった。圧力pが最大値をとる時刻から、次に最大値をとる時刻までの1周期を8等分し、,・・・,と順に時刻を定める。
(b) からまでの各時刻の中で、x軸の正の向きに空気が最も大きく変位しているのはどの時刻か。

3のように、原点Oから見て点Pより遠い側の位置に、x軸に対して垂直に反射板を置くと、圧力が時間とともに変わらず常にとなる点がx軸上に等間隔に並んだ。
(c) これらの隣接する点の間隔dはいくらか。なお、音波の速さをcとする。
(d) (c)の状態から気温が上昇したところ、問(c)で求めたdは増加した。その理由を説明せよ。

[B] 音波が大気中を伝わるとき、各部分では空気の圧縮と膨張が繰り返されている。圧縮と膨張は熱の伝達よりはやく起こるため、断熱変化とみなすことができる。音波が空気中をどのように伝わるかについて手がかりを得るため、空気を理想気体として以下のような簡単なモデルを考える。
4上図のように空気をx軸方向に細かく等間隔に分割し、各区間をピストン付きの円筒断熱容器に閉じ込められた空気で置き換える。図4下図はそのひとつの部分を示したものである。ここでピストンはなめらかに動くことができ、また大気圧における容器内の空気の体積をとする。
音波が到達することによりピストンは隣接する空気から力を受け、容器内の空気の圧力がに増加し
(),体積がに減少()したとしよう。ただし、は、それぞれに比べ十分小さい量とする。以下の計算では、微小量どうしの積は無視してよい。また必要ならば、微小量h (1に比べて十分小さい)、ゼロでない数nに対して成り立つ近似式を用いよ。
(e) 容器内に閉じ込められた空気の圧力の増加量と体積の減少率の比をとおく。断熱変化のもとでは、圧力pと体積Vの間にの関係が成り立つことを用いてKを求めよ。ここでγ は、定圧モル比熱を定積モル比熱で割った定数である。
(f) 空気中を伝わる音波の速さcは、Kと空気の密度ρ とを用いてと表せることがわかっている。両辺の次元を比べることにより、αβの値を求めよ。
(g) (e)と問(f)の結果より、付近の音波の速さcは、摂氏温度θ を用いて、という近似式で表せることがわかる。空気の1モル当たりの質量をM,気体定数をRとし、における音波の速さを式で表せ。また、定数aの値を有効数字2桁で求めよ。


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解答 [A]は波の基本問題ですが、慎重に考える必要があります。[B]は、音速cの摂氏温度θ 依存性を示す式:を導く問題ですが、誘導通りに解答すればOKです。なお、波動現象を参照してください。

[A](a) 圧力が大きい位置は、その両側から空気分子が寄ってくる位置です。圧力が低い位置は、その両側へ空気分子が離れて行く位置です。
従って、の間では空気分子はx軸負方向に動き、の間では空気分子はx軸正方向に動きます。
よって、
x軸の正の向きに空気が最も大きく変位している位置は、 ......[]
同様に、x軸の負の向きに空気が最も大きく変位している位置は、
横軸に
x,縦軸に変位をとって、グラフを描くと、図1のグラフをx軸負方向にだけ平行移動したグラフになります。ほんの少しだけ波動をx軸正方向に進めたグラフと比較すると、の位置では、変位ゼロですが、x軸正方向に最も速く変位することがわかります。
x軸の正の向きに空気が最も速く動いている位置は、 ......[]
(b) (a)x軸の正の向きに空気が最も大きく変位している位置がだったということは、図1のグラフをほんの少しだけx軸正方向に進めたグラフと比較すると、ここは、圧力が下がる方向に変化中だということがわかります。図2のグラフで、x軸の正の向きに空気が最も大きく変位している時刻は、圧力ゼロで圧力が下がる方向に変化している時刻で、 ......[]
(c) 反射板を置くと、定常波ができます。定常波の節の間隔d波長で、 ......[]
(d) 気温が上昇すると、音速cは増大し、振動数f は一定なので、(c)は増加する。 ......[]

[B](e) の関係(断熱変化を参照)より、
で両辺を割り、問題文の近似を行うと、
......[]
(f) 長さL時間T質量Mとすると、音速cの次元は[L/T]の次元は、圧力=/面積=質量×加速度/面積の次元と同じで、[M][L/]/[]=[M/(L)]密度ρの次元は[M/]

L
T
M
これらを解いて、 ......[]
(g) 空気のモル数をn絶対温度Tとして、圧力体積のときの状態方程式は、
また、このときの1モル当たりの質量Mは、空気の質量をモル数nで割って、(f)より、
より、
よって、 ......[]
......[]
注.空気は2原子分子、窒素,酸素の混合気体です。比熱比,空気の1モルあたり質量を代入すると、となり、が得られます。


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