京都大学
2004
年前期物理入試問題
[1]
次の文を読んで、
には適した式を、
{
}
からは正しいものを選びその番号を、
には
20
〜
50
字程度の適切な語句を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、
は、すでに
で与えられたものと同じものを表す。
質量を無視できる軽いひもの一端が原点
O
に固定され、他端には、質量
m
の、大きさを無視できる小球がつけられている。ひもは自然長が
l
で、自然長より引き伸ばす引張りに対しては、フックの法則に従うばね定数
k
のばねのようにふるまうが、圧縮や曲げには全く抵抗しない。ここで、重力加速度を
g
とし、小球とひもの運動に対する空気の抵抗は無視できるものとする。また、原点
O
から水平方向に
x
軸、鉛直上方に
y
軸をとり、
y
軸上の
の点を
A
とする。
(1)
図
1
のように、小球を静かにつるしたとき、小球は
−
ア
において静止した。この位置を点
B
とする。
(2)
小球を点
A
から静かに放したときの運動を考えよう。小球が到達する最下点は、
{
イ.@点
B
より上である。A点
B
に一致する。B点
B
より下である。Cこれだけでは判断できない。
}
また、この場合の小球の運動は
ウ
である。
(
ウには、例えば「点
A
から点
B
にいたる等速直線運動」のような語句を記入せよ。
)
(3)
次に、小球を原点
O
から静かに放した場合を考えよう。小球が放されてから初めて
(
ただし、
)
に達したときの速度の大きさは
エ
で与えられる。また、小球が達する最下点は、点
B
より距離
オ
だけ下の位置である。
小球が初めて点
A
に達してから次に点
A
にもどってくるまでの所要時間
を調べてみよう。小球が初めて点
A
に達してから初めて点
B
に達するまでの間における速度の大きさの最小値は
カ
である。一方、小球が初めて点
B
に達してから次に点
B
にもどってくるまでの所要時間は
キ
である。したがって、所要時間
は、
2×
オ
+
キ
カ
より小さい。
以上の結果より、ばね定数
k
が非常に大きい極限では、ひもの伸びの長さ、および、ひもが伸びている間の時間は、ともに非常に小さくなる。したがって、この場合の小球の運動は、点
A
を通る水平な床に衝突し、反発係数
(
はねかえり係数
)1
ではねかえる場合の運動と同じであるとみなすことができる。
(4)
以下では、ばね定数
k
は十分大きくて、
(3)
の最後で述べた考え方が成り立っているものとする。
今度は、小球を
y
軸上の
(
ただし、
)
の点
C
から、時刻
に、
x
軸の正の向きに初速度
(
ただし、
)
で投げた。ひもは、小球がある点
D
に達したとき、初めて伸びきった。その後、小球は
CD
間の経路を逆にたどって点
C
を通過し、点
E
で再びひもが伸びきった後、
CE
の経路を逆にたどって点
C
にもどり、以後これを繰り返して周期運動を続けた。この周期運動が実現するために必要な、
と
の間の関係を調べてみよう。まず、点
D
に達する直前の小球の速度の
x
,
y
成分
と、点
D
の
x
,
y
座標
の間には、
=
ク
の関係が成り立っていなければならない。また、小球が初めて点
D
に達した時刻を
として、
,
を
,
,
T
,および重力加速度
g
を用いて表せば、
=
ケ
,
=
コ
である。
,
も同様にして表すことにより、
T
と
の間の関係、
=
サ
が得られる。したがって、
でなければならない。さらに、条件
を用いれば、
は初速度
の関数として決まり、
=
シ
となる。
[
解答へ
]
[2]
次の文を読んで、
に適した式をそれぞれの解答欄に記入せよ。なお、文中に挿入された問
1
については、解答欄にグラフを描け。
図
1
のように、一端が壁
A
で閉じられた、断面積
S
のシリンダーがあり、摩擦なしで動くことができるピストン
B
,
C
によって
3
つの空間領域T,U,Vに分けられている。領域Tには電気抵抗
r
のニクロム線でできたヒーターがあり、内部抵抗を無視できる起電力
V
の電池とスイッチ
K
でできた外部の回路に導線でつながれている。ピストン
B
にはごく細い通気口が開けられているが、最初は弁
D
によって閉じられている。ピストン
B
,
C
は、フックの法則に従う自然の長さが
L
のばねで結ばれている。シリンダー内には、壁
A
から距離
の位置にストッパー
が、さらに
からばねの自然長
L
とピストン
B
,
C
の厚さをあわせた距離の位置にストッパー
が設けられ、ピストンを停止できるようになっている。ただし、
L
は
より大きい。また、シリンダーとピストンはともに断熱材でできており、ストッパー、ばね、弁、通気口、ヒーターおよび導線の体積は、いずれも無視できるものとする。なお、大気圧を
とする。
最初は、領域Uは真空で、領域Tには単原子分子理想気体が入れられ、その圧力と温度がそれぞれ
,
であった。また、領域Vは常に大気圧
の外気と通じている。図
1
に示したように、この状態でピストン
B
はストッパー
に接触して停止し、ピストン
C
はストッパー
から距離
a
の位置で停止していた。このことから、ばね定数は
イ
であることが分かる。その後、以下のように過程
(1)
から
(4)
の順にシリンダーの状態を変化させた。
(1)
スイッチ
K
を閉じて回路に電流を流すと、領域Tの気体の温度はゆっくりと上昇し、ある時刻にピストン
B
がストッパー
を離れ始めた。このときの領域Tの気体の温度は
ロ
であった。電池により供給されたエネルギーがすべて気体に吸収されたとすれば、この時刻はスイッチ
K
を閉じてから時間
ハ
の後である。
(2)
その後、ピストン
B
はゆっくりと移動し、領域Tの気体の温度が
ニ
になると、ピストン
C
がストッパー
に接触し停止した。この過程で領域Tの気体が吸収した熱量は
ホ
である。
(3)
さらにピストン
B
はゆっくりと移動し、ピストン
B
,
C
間の距離が縮まっていった。ばねの長さが
に達した時点でスイッチ
K
を開いた。このとき領域Tの気体の温度は
ヘ
であり、過程
(3)
で領域Tの気体が吸収した熱量は
ト
である。
問
1 (1)
から
(3)
までの過程における領域Tの気体の状態変化の様子を、図
2
のように体積を横軸に、圧力を縦軸にとり、解答欄にグラフで示せ。グラフ用紙の横軸と縦軸の目盛りの数値は、それぞれ量
と
を
1
として表している。例えば図中の×印の点は、体積が
,圧力が
の状態に対応する。グラフは概略を示すものでよいが、図中の記入例にならって、各過程の始点と終点に黒丸・を、さらに適当な位置に
(1)
,
(2)
,
(3)
の番号を付け、グラフのそれぞれの部分がどの過程を表すかが分かるようにすること。
(4)
その後、ピストン
B
の弁
D
を開いたところ、ピストン
B
はゆっくりと動き始め、ばねは自然長に戻ったが、ピストン
C
はストッパー
に接触したままであった。スイッチ
K
は開いていたから、この過程は断熱変化である。ばねが自然長に戻ったとき、シリンダー内の気体の温度は
チ
であった。また、このときにもピストン
C
がストッパー
に接触したものであったことから、ばねの自然長
L
と長さ
a
の間には、
≧
リ
の関係が成り立っていたことが分かる。
[
解答へ
]
[3]
次の文を読んで、
には適した式を、
には正しいものを選びその記号を、それぞれの解答欄に記入せよ。
図
1
に示されたような、長さ
L
,質量
m
の細い導体棒が、半径
a
の
2
枚の導体円板
P
,
Q
の縁で円板に対して垂直に固定され、水平に設置された装置がある。
2
枚の導体円板は、円板の中心を通る導体でできた水平な軸のまわりを摩擦なしで、
2
枚そろって自由に回転できる。この装置に対して、鉛直下向き方向、あるいは導体棒に対して垂直な水平方向に一様な磁界を加えることができる。ここでは、導体円板の質量、導体棒の太さ、導体棒と軸および円板の電気抵抗、
2
枚の導体円板の間の空間に生じる電界の影響および導体を流れる電流が作る磁界の影響は、いずれも無視できるものとする。また、重力加速度を
g
とし、空気による抵抗はないとする。
(1)
図
1
のように、鉛直下向き方向に磁束密度
B
の一様な磁界が加わっている。導体棒が最も低い位置にある状態から導体円板を微小角
だけ回転させ静かに手を離すと、導体棒は角振動数
あ
で単振動し、このとき
2
枚の導体円板の間に生じる誘導起電力の最大値は
い
であった。
(2)
図
2
のように、鉛直下向き方向に磁束密度
B
の一様な磁界を加え、
2
枚の導体円板の間に電気抵抗
R
の抵抗と起電力
V
の電池を直列に接続した。このとき、導体円板に手を添えてゆっくりと回転させ、ある角度で静かに手を離すと、導体棒は静止した。この静止位置は、鉛直下向き方向に対して、
=
う
を満たす角度
q
の位置である。この静止位置から、さらに導体円板を微小な角度だけ回転させ静かに手を離すと、導体棒は角度
q
の位置を中心にして、しばらくの間振動した。振動の減衰が無視できる場合には、この振動は角振動数
え
の単振動で表される。
(3)
図
3
のように、今度は導体棒に対して垂直な水平方向に磁束密度
B
の一様な磁界が加わっている。導体棒の位置が鉛直下方から角度
だけ回転した状態で静かに手を離すと、導体棒は振動を始めた。ここでは角度
は必ずしも微小ではない。また、図の
の向きを角度
q
の正の向きとし、
とする。さらに、導体円板
P
,
Q
の間に生じる起電力は、
P
から
Q
に向かう向きを正とする。導体棒が、鉛直下方から角度
q
だけ回転した位置において、角度
q
の正の向きに運動しているとき、導体棒の速さは
お
であり、導体円板の間に生じる起電力は、
か
で与えられる。
導体棒の振動によって生じる起電力の時間的変化の概略を、静かに手を離してから後の導体棒の振動の
1
周期にわたってグラフで表すと、図
4
の
き
のようになる。ただし、図
4
のそれぞれのグラフの縦軸は起電力を、横軸は時間を表している。
(4)
図
5
のように、
2
枚の導体円板の間に電気容量
C
のコンデンサーと抵抗
R
を直列に接続した。導体棒に対して垂直な水平方向に磁束密度
B
の一様な磁界を加えた状態で、導体円板を一定の角速度
w
で回転させると、
2
枚の導体円板間に生じる起電力の最大値は
く
となる。
ここで、回路を流れる電流が周期的となり、
で表されるようになったとして、この
I
を用いると、抵抗の両端にかかっている電圧は
け
,コンデンサーの両端にかかっている電圧は
こ
と表される。したがって、抵抗とコンデンサーの直列回路の両端にかかっている電圧の最大値は
さ
×
I
となる。
以上により回路を流れる電流の最大値
I
が求められる。
[
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